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歯の接着の話

こんちには、金川歯科のかんです。

今回は歯の接着剤について解説したいと思います。

まず歯の構造から

歯は表面のエナメル質内層の象牙質の二層構造をしています。

エナメル質は90%以上ミネラル(無機質)でできており、ハイドロキシアパタイトというリン酸カルシウムの結晶でできた人体の組織の中で最も硬い組織です。

一方、象牙質は7割は無機成分からできていますが、残りの3割はタンパク質などの有機成分を含んでいます。無機成分はエナメル質と同じくハイドロキシアパタイト結晶でできています。そして象牙質の有機成分は、主にコラーゲンタンパク質で、構成成分としては骨に近いものがあります。

エナメル質は酸で溶かせばくっつく

エナメル質は、ほとんどが無機成分であり、酸で溶解する性質を持っています。なので、この酸による溶解を利用し、エナメル質表面を酸で処理して脱灰させてギザギザの面を形成し、そこに歯科材料を流し込んで固めれば、割と簡単に歯科材料がくっつきます。

(図1)リン酸処理によってエナメル質表面には凹凸面が形成される

具体的には、エナメル質表面に約40%のリン酸溶液を塗布すると(エッチングetching)、エナメル質表面には細かい凹凸ができます。そこに歯科用樹脂(レジン)を流し込んで固めると、エナメル質表面にレジンが嵌合し、はがれなくなります。

このように、エナメル質は簡単な酸処理で歯科材料の接着が得られますので、昔からこの仕組みを応用して歯科用樹脂をくっつけて使っていました。

象牙質表面には髪の毛がある?

一方、象牙質の場合、リン酸による表面処理を行なっても、エナメル質のようにレジンがあまりくっつかないです。

象牙質はコラーゲン線維をたくさん含んでいるので、リン酸で象牙質表面の無機質を脱灰しても、コラーゲン線維がぐちゃぐちゃになった髪の毛のように残るので、それが邪魔をして、レジンが表面に嵌合しないのです。

なので、まずコラーゲンとの親和性の良い親水性モノマーからできているプライマーを塗布し、その上にレジンとの親和性の良いボンディング剤を塗布して、プライマーとポンディングで処理された象牙質表面樹脂含浸層hybrid layer)にレジンをくっつける格好で象牙質への接着を獲得します。

(図2)プライマーとボンディング剤によって形成された樹脂含浸層(hybrid layer)のイメージ

象牙質への接着を得るためには2つの戦略がありますが、

1)ウェットボンディング:リン酸処理後、リン酸を水で洗い流し、水を乾燥させずに余剰な水分のみを拭き取り(ブロットドライ)、プライマーを塗布して、ボンディング剤を塗布する

2)セルフエッチングプライミング:リン酸処理は行わずに、酸性モノマーを含有するプライマー(セルフエッチングプライマーself-etching primer)を塗布することで、脱灰とともにプライミングをして、その上にボンディング剤を塗布する

セルフエッチングプライマーは日本ではじめて開発されたもので、日本の歯科臨床では、2)のセルフエッチングプライマーによる象牙質接着が主流になっていますし、実際、接着強さも簡単なやり方でしっかり得られる方法ですし、ウェットボンディングのように水を残さないのでレジンの重合阻害などの心配もありません。

象牙質表面を脱灰すると同時に、コラーゲン線維に染み込むセルフエッチングプライマーには親水性モノマーであるHEMAMDPなどの酸性モノマーが含有されています。

酸性モノマーであるMDPは、歯面以外にも、貴金属、シリカ系材料、ジルコニア系材料にも接着性を有するという報告があり、特に歯科用レジンとの接着が難しいとされていたジルコニアにも有効というところがありがたいですね。

 

今回は、歯の接着剤について解説しました。

歯でもエナメル質と象牙質でその組成の違いから、表面処理も変わってくることがわかりましたね。

特に象牙質のコラーゲン線維をどう処理するかで、象牙質表面への接着が決まることもわかりました。

歯の接着の話は、少し難しい内容かもしれませんが、勉強してみると面白い分野ですし、歯科にとってはかなり画期的なものなのです!

それではまた!

富山市総曲輪の歯医者|金川歯科

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