こんにちは、金川歯科のかんです。
歯の痛みの原因は単純にみえて、実は複雑です。
特に咀嚼筋の筋肉痛と歯の痛みが密接に関係していることがよく知られています。
今回は、日本口腔顔面痛学会の非歯原性歯痛ガイドラインを参考に、筋肉痛と歯痛の関係を勉強してみます。
筋・筋膜性歯痛の性質や歯痛と関連の多い筋
非拍動性(ズキズキは少ない)のうずくような痛みで、歯髄(歯の神経)に起因する痛みに比較して、持続時間が長いそうです。また、痛みは筋の酷使によって生じ、心理的ストレスで悪化すると記載しています。
問診では「食後に痛みが強くなる」と訴えることが多く、食事などで咀嚼筋を使った後に痛みが増悪するところが特徴です。
咀嚼筋などの骨格筋が疲労すると易刺激性の圧痛点が形成され、「トリガーポイント」といわれており、関連痛を生じさせます。口腔顔面部における関連痛のパターンとして、
1)側頭筋から上顎の歯
2)咬筋から上下顎臼歯部、耳、顎関節
3)その他:外側翼突筋から上顎洞と顎関節、顎二腹筋から下顎前歯部、胸鎖乳突筋から口腔内と前頭部、僧帽筋から下顎や側頭筋部
また、頭頸部の筋・筋膜痛の関連痛により歯痛を引き起こす頻度は50%で、その内、咬筋による関連痛が47%、側頭筋による関連痛が30%、胸鎖乳突筋、僧帽筋・顎二腹筋による関連痛が17%の順で多いと報告されています。
なので、原因がわからない歯痛ではまず、咬筋や側頭筋のトリガーポイントがあるかを確認しましょう。
筋筋膜性歯痛の診断
咬筋・側頭筋などの圧痛点、つまりトリガーポイントを5秒間圧迫することで、歯痛が再現できるかを確認します。
また、トリガーポイントに局所麻酔をして疼痛が軽減するかを確認することで診断する方法もあります。
一応、トリガーポイントの定義として、1~2mm程度の筋肉の硬結ですが、組織学的・画像診断的に確認されないことから、その存在について議論されているそうです。
筋筋膜性歯痛の治療
生活習慣を改善し、関連筋の疲労を是正することが大切です。具体的には、
1)肉・フランスパン・イカなどの硬いものを控え、できるだけ柔らかいものを食べる
2)ガムを噛まない
3)歯を接触させる癖(TCH)を是正し、上の歯列と下の歯列を約2~3mm話す(安静位を保つ)
4)筋肉をマッサージする
5)温湿布やお風呂で筋を温める
スプリント療法(マウスピース)は有効か?
学術的には、その効果のエビデンスが十分でないと記載されています。
しかし、歯ぎしりの方には、スプリントの使用で、一過性に疼痛軽減がみられるという報告があるそうです。
スプリント療法は、筋筋膜性歯痛への治療効果のエビデンスは少ないものの、歯を削ったりするわけでもなく、可逆的で保存的治療なので、歯ぎしりや噛み締めの診断の意味合いもかねて、試してみる価値は十分あると思います。
今回は、筋肉痛に関連して歯痛が誘発されることがわかりました。
歯が痛いからといって、歯だけに問題をみつけようとしてはいけないんですね!
それではまた!