どのような症状の際に根管治療は
必要ですか?
何もしなくてもズキズキ痛い、噛むと痛い、歯の根元が腫れた、などの症状がある場合は根管治療が必要になってきます。
歯の神経がない状態でも、根管治療の失敗により、歯の中に細菌が増殖し、根の先の歯周組織に炎症をひき起こすことで痛みを感じるようになります。
虫歯などで歯の中に侵入してきた汚れや細菌をきれいに取り除く治療です。
生まれ持った歯に代わるものはありません。自分の歯は自分に合う一番の生体材料です。いくらインプラント治療や再生治療が発展しても、ご自身の体が作ってくれた歯を完璧に再現することは不可能です。そのような天然歯は一度失ってしまうと、2度と再生しないので、歯をしっかり守って残すことがとても大切です。
何もしなくてもズキズキ痛い、噛むと痛い、歯の根元が腫れた、などの症状がある場合は根管治療が必要になってきます。
歯の神経がない状態でも、根管治療の失敗により、歯の中に細菌が増殖し、根の先の歯周組織に炎症をひき起こすことで痛みを感じるようになります。
歯を失う原因としてよく知られているのは、歯周病がありますが、その他の原因として最も多いのは歯根破折です。歯根破折は、根管治療が行なわれている歯によくみられるものです。根管治療によって、歯根は薄くなり、天然歯に比べると、当然歯の強度は下がってしまいます。
さらに、日本の保険診療による根管治療の成功率は約5割といわれており、再治療が非常に多く、再治療が重なると、歯の強度はさらに下がり、歯根破折が起きるリスクも上がってしまいます。このように、根管治療が必要になった場合に、精密で確実に行うことは、再治療と歯根破折を防止することになり、歯の寿命の延伸にもつながります。
また、根管治療が本当に必要かを見極める診断力も極めて重要で、それができる歯科医師に出会えるのが非常に大切です。間違えた診断で、あなたの大切な歯の神経が失われないことが大切です。
マイクロスコープの拡大視野やMTAの活用により、歯の神経を取らずに温存させるケースが増えました。あなたの大切な歯が根管治療される前に、本当に治療が必要かどうか疑問になったら、ぜひ当院でご相談ください。
当院ではマイクロスコープを導入し、5〜20倍の拡大視野下で、肉眼ではほとんど見えない根管内を細かく観察しながら治療します。
また、歯科用CTも完備しており、事前に三次元のエックス線画像で歯の状態を評価した上で、正確で安全な治療を目指しています。
ニッケルチタン製の根管内切削器具(NiTiファイル)を用いて、迅速で歯に優しい治療、歯根破折が起きにくい根管治療を目指しています。
NiTiファイルは、電動モーターにつけて使用することで、従来のステンレス製の手用ファイルと比較して、格段に治療効率を上げてくれます。特に、最近のNiTiファイルは形状や金属特性の改良により、歯に余計な力をかけずに優しく削れるようになりました。
また、歯の無駄な強度低下が無いように、必要最低限の量だけ根管内を切削し、歯根破折の少ない根管治療を目指します。
根管治療によって歯の内部(根管内)は開放されることになるので、感染源の混入に気をつけなければなりません。
根管内は複雑な形をしている微細な空洞であり、一度根管内に感染源が入ってしまうと、その中をきれいにすることは非常に難しいです。そのため、根管治療において、余計な感染源を入れないための無菌的治療の実施がとても大切になります。
ラバーダムは、お口の中から治療する歯だけを隔離した状態にし、唾液や口腔内からの感染源の歯の内部への流入を防ぎ、無菌的治療の大前提といえます。
治療による機械的、化学的刺激が根の先を刺激することで、痛みを感じることがあります。
事前に麻酔をすれば、治療途中に痛みを感じることを防げます。
前歯のように、アプローチが比較的簡単で、根の形が単純な場合は、その日に終えることもできます。臼歯のように、奥でアプローチが難しく、3〜4つの根がある場合は、根の治療だけで3回以上の来院が必要になる場合もあります。
虫歯をきれいに取り除き、MTAという生体親和性・封鎖性の良い歯科用セメントで歯の神経を保護します。
歯の神経全体が虫歯菌に感染してしまい、神経を残せないと判断した場合には、神経を取り除く治療(通常の根管治療)を行います。
歯の中を徹底的に除菌し、ガッターパーチャという充填材で、根の中を封鎖します。
精密根管治療を続けても炎症が治らない、虫歯が広範囲に進んでしまって土台を立てて歯を作れない場合や、根が縦に割れてしまい、その割れ目に沿って歯周病が進行し、歯周ポケットができている場合は、抜歯をお勧めします。
歯の中、つまり根管は複雑な形をしています。なので、CT検査を行うことで、事前に複雑な根の形を三次元的に把握することは、精密診断を行う上で重要です。また、歯科用マイクロスコープは、精密根管治療に欠かせないもので、根管内を実際見えるようにすることで、根管内の虫歯や汚れなどを確実に取り除くためには必須な設備といえます。
また、マイクロスコープの拡大視野は、肉眼では診断できなかった歯の亀裂や歯根破折などの確定診断にも役立ちます。
歯科治療に用いる実体顕微鏡のことで、約20倍まで視野を拡大してくれます。また、カメラで記録することもできるので、実際歯がどのような状態かを画面上に表示できます。
根管治療にマイクロスコープを用いることにより、歯の細かい部分が見えるようになります。従来は、手探りでやっていたため、根管穿孔、歯根破折、難治性の再発症例などへの対応が非常に難しかったですが、マイクロスコープの拡大視野のおかげで、対応できる治療範囲が広がりました。
また、カメラを接続することで、実際の歯の状態を画像や動画データとして保存でき、治療後の説明などにも役立ちます。
歯を、ゴムのシートで、お口の中から分離し、口腔内の唾液や唾液の中の細菌が歯の中に入ってくるのを防止します。また、根管治療で使う強力な消毒液がお口の中に漏れることも防いでくれます。
お口の中は、細菌でいっぱいです。ラバーダムは、根管治療中の歯を、お口から分離し、歯の中に、お口の細菌が入ってこないようにするものです。根管治療において、ラバーダムは必要不可欠なものといえます。
MTA(Mineral Trioxide Aggregate)は、工業用セメント(ポルトランドセメント)を精製したものを原料として開発されました。
根管に穴があいてしまった時に(根管穿孔)、その穴を詰める目的で開発され、良好な治療結果があったことから1990年代から根管治療用材料として注目されるようになりました。
そのすぐれた封鎖性と生体親和性から、最近では歯髄保存療法、歯髄再生療法、外科的歯内療法など、歯内療法において欠かせない材料として用いられています。
MTAの主成分はケイ酸カルシウム(ケイ酸三カルシウムとケイ酸二カルシウム)であり、ケイ酸カルシウムに水が添加されることで水和反応が起こり、ゆっくりと時間をかけてケイ酸カルシウム水和物と水酸化カルシウムを形成しながら固まります。
ケイ酸カルシウム水和物は、膨張しながら硬化し、穴に詰めたときにしっかりとした封鎖性を発揮します。また、ケイ酸カルシウム水和物は、生体親和性の高い成分であり、歯髄や歯周組織に接していても安全性が高いです。
そして、水和反応の副産物ともいえる水酸化カルシウムは、強いアルカリ性を示すため、MTAの抗菌効果に働きますし、水酸化カルシウムからのカルシウムイオンは、歯(象牙質)や骨を作るために必要な成分としても働きます。
MTAは、次のような目的で特に根管治療の領域で用いられています。
具体的には
●歯髄保存療法
むし歯で歯髄が露出したときの封鎖
●歯髄保存療法
むし歯で歯髄が露出したときの封鎖
●歯髄再生療法
歯髄再生療法時の根管内の封鎖
●穿孔修復
根管内に穴があいてしまい、歯周組織が露出したときの封鎖
●逆根管充填
外科的に根の先(根尖)からアプローチして根管治療をしたあとの充填
・MTAによる逆根管充填
術前
術後
などがあげられます。
また、歯根吸収などの難症例においてもMTAによる根管充填が非常に有効です。
・歯根内部吸収歯牙のMTA根管充填
術前
術後
・歯根吸収歯牙のMTA根管充填
術前
術後
まずファイルとは、根管内のむし歯を切削するときに使う細長い針のような器具です。従来は、ステンレススチール製のファイルを手で回転させながら使うのが主流でした。
手で動かすので、特に奥歯の治療の場合は、どうしても治療効率が悪いところがありました。そこで、NASAで開発された超弾性、形状記憶などの特殊な性質をもつニッケルチタン合金を使ったファイルが開発され、電動モーターにつけてぐるぐる回しながら、根管内のむし歯を切削できるようになりました。
モーターで回転させるため、異常な力がかかると折れてしまうというニッケルチタンファイルの最大のデメリットを克服するため、ニッケルチタンファイルの形状、モーターの回転方式、熱処理加工などの技術開発が進み、従来より丈夫で、使い方もシンプルな物に進歩してきました。
ニッケルチタン合金の特徴として、まず超弾性があります。一般的に、金属を曲げると元の形に戻らず変形してしまいますが、ニッケルチタン合金の場合は、曲げると、ばねのように元の形に戻ろうとする特性を持ちます。このような性質を超弾性といいます。
また、もう一つの特徴として、形状記憶があります。ニッケルチタン合金は熱処理によって結晶構造が変わり、マルテンサイト相という結晶構造が優位な状態では、超弾性を有せず、むしろふにゃふにゃな柔らかい状態で、曲げると元に戻ろうとせず、変形したままの状態になります。変形したニッケルチタン合金に熱を加えると、元の形に戻ります(マルテンサイト相からオーステナイト相へ)。このような特徴を形状記憶といいます。
このように、ニッケルチタン合金は、熱加工によって、超弾性を有するもの(オーステナイト相優位)と、形状記憶を有するもの(マルテンサイト相優位)の二種類に分けることができます。従来のニッケルチタンファイルは、超弾性のものが主流でしたが、最近のニッケルチタンファイルは、形状記憶のものも開発されてきています。それぞれの利点と欠点がありますので、両者を有効に使い分けることが推奨されています。
・超弾性NiTiファイル
・形状記憶NiTiファイル
根管治療が必要である診断は、簡単そうにみえて非常に原因が複雑でわかりづらい場合が多いので、専門機関で根管治療をトレーニングしている先生にみてもらわないと、治療が必要なのに放置される、または全く治療が必要ないのに無駄な治療を受けるということになります。
また、根管治療は精密さが要求される繊細な作業なので、マイクロスコープが完備されている歯科医院が良いと思います。また、無菌的な根管治療のために必ず必要であるラバーダム防湿をきちんと行っているかを確認した方が良いと思います。
他院で「抜歯」と診断された場合でも、歯を残すことが可能なこともございます。
マイクロスコープやMTAの登場により、根管治療によって歯を残せる範囲は広がっています。一度、ご相談ください。